【あらすじ】
専業主婦の恭子は、夫の子供を身籠ったという不倫相手を毒殺する。だが、何日過ぎても被害者が妊娠していたという事実は報道されない。殺したのは本当に夫の愛人だったのか。
嵌められたのではないかと疑心暗鬼になる恭子は、自らが殺めた女の正体を探り始める。
そして、彼女を執拗に追うベテラン刑事・戸田との壮絶な闘いが始まる。
【感想】
完璧。読了後、唸ってしまった。
結構多いページ数なのだが、無駄のない文章と構成で、読み始めから最後まで一気に読ませてしまう。普通、途中で脱線したりテンポが落ちたりしたりするものだが、それがない。
内容はいたってオーソドックスというかスタンダードな不倫系ミステリーで、犯人と被害者は分かっているのだが、動機が分からない。動機を探っていくうちに事件は二転三転していく。この二転三転のさせ方と読ませ方が本当に上手い。
美人で聡明で打算的な恭子を反抗に駆り立てるほどの動機とは?
とにかく引き算の利いた文章なのだ。
執拗な刑事との対決、やられたら刺し違えてでもやり返す復讐心、恭子の執念とプライドは恐ろしいほど伝わってくる。そして哀しみも…
金や地位や名誉だけでは、人の心は満たされない。本当の幸せとは、心を満たす物とは、そんな普遍的なテーマをこの作品から感じ取ってしまうのは、私だけだろうか。
正直、古典的というか様式美というか、展開は読めてしまうのだが、あまりに文章と構成が無駄のない為、この世界から抜け出すことが出来なくなってしまう。
複線の張り方も違和感がなく綺麗にはまってくるし、物語も最後まで責任持って終わってくれているので最後まで読みきってすっきりするし、達成感があるのは嬉しい。
天野節子、この作品がデビュー作というのが凄すぎる。しかも若いのかな?と文章から勝手な想像をしていたのだが、なかなかの年齢。
まだこの作品しか読んでないが、これからは要チェック。
【評価】
★★★★☆ で結局、誰が勝ったん?


